OBPスタイル|vol.19 ワーカー達で高め合う意識 進化し続けるエリア防災訓練

2018年10月25日、今年も大阪ビジネスパークエリアでは防災訓練が行われました。全国的に見ても実施内容が注目されるOBPの防災訓練には、府外から見学者が来られるほど。
さて、昨年の取材の時と比べてどのような進化をしているのでしょうか。OBP Style vol.19は1年越しの「OBP帰宅困難者退避誘導訓練」の変化をリポートします。

OBPの防災訓練は進んでいる

OBPの防災訓練は進んでいる

OBPは都市再生緊急整備地域の指定エリア。大阪ビジネスパーク都市安全確保促進事業の一貫として「安全確保計画」「災害行動マニュアル」を作成し、帰宅困難者退避誘導訓練を毎年実施しています。
実際にエリアの住人を動かして訓練を行うのは、準備、本番ともに、大きな労力が必要であることは想像に難くありません。しかし、全国の指定地域の中でも目立って防災訓練のレベルが進んでいるのが、ここOBP。府外から見学者も訪れます。

4年目のテーマは「あらゆる人の対応力強化」

4年目のテーマは「あらゆる人の対応力強化」

2016年度より始まったOBPの防災訓練は2018年度で4回目を迎えます。
過去に行われた3度の訓練では、情報伝達訓練として防災担当者が無線機の検証・訓練を行うものや、南および北ブロックの避難誘導訓練でした。(→2017年度の様子はこちら
そして今年度は、西ブロック(松下IMPビル、ツイン21(MIDタワービル、パナソニックタワー)、ケイ・オプティコムビル、クリスタルタワー)を対象とした総勢約200名の避難誘導訓練。さらに、新たなテーマとして “防災担当スタッフの育成訓練”が加えて掲げられました。

4年目のテーマは「あらゆる人の対応力強化」

また周辺地区からは、昨年から引き続き参加の桜宮連合町会と、今年度初参加の玉造連合町会で、合計約20名の住民が参加。
昨年度と同様、ビルで働くワーカーが帰宅困難者として避難をするほか、今年度はさらに海外からの旅行者や、けが人、要介助者など、様々な役割の人を混ぜている点は特徴的です。
実際に車椅子に乗っての行動や、アイマスクや耳栓をしてハンディキャップの体験を盛り込むなど、更にリアルな状況をつくり出すシナリオで行われました。

ワーカー中心で進める訓練へとシフト

ワーカー中心で進める訓練へとシフト

先にも述べた“防災担当スタッフ”ですが、OBPエリアには各ビルから選出された2〜3名が、防災担当スタッフとして年に4〜5回の会議を重ねていることをご存知でしょうか?
彼らは過去の訓練にも「災害対策本部サポートメンバー」として毎回本番の訓練にも参加されています。
今回は「スタッフ育成」のテーマのもとに、これまで主にOBP協議会で構成される災害対策本部コアメンバーが行っていた一連の企画や準備、進行(訓練のストーリーの企画・立案から、災害対策本部を設営、各ビルの退避誘導、救護や要案内者対応など退避後の各訓練に至るまで)をサポートメンバーまで担当を広げて執り行われました。
いざ震災が起こった時に誰かの指示を待つのではなく、防災担当スタッフがエリア防災の核となって企業同士の連携を取れるようにする。
訓練の主旨はこのような点にもあるようです。

防災担当側の事前準備はもっと必要

防災担当側の事前準備はもっと必要

今回、災害対策本部のサポートメンバーとして参加された男性スタッフは、
「この本番を迎えるまで、スタッフは事前に何度も机上でシミュレーションをしてきましたが、実際に現場で自分の持ち場に立ってみると、今違う場所では何をしているのか、まわりはどのような状況なのか、なぜ待機しているのかなど、全体的な動きを把握しきれなかった点が課題だと感じました。スタッフ用の着衣で立っていると帰宅困難者役の方から質問をされますが、そんな時にお答えできなかったことも、全体を把握できていないことに帰するのだと思います。」
と、訓練を振り返ると同時に、
「来年はOBPエリア全体で行う訓練ですから今回のように分からないということでは済まされない規模のはず。訓練本番を迎える前に、机上に留まらず現場で通し確認をするなど、防災担当スタッフがまずは全体を理解しておくことが重要なのではないかと思いました。」
と来年度に向けた準備の必要性を語られました。

翻訳スピーカーは役に立つ

翻訳スピーカーは役に立つ

避難者役の中には、本物の外国人役としてインドネシア出身の20代女性2名も協力されていました。シナリオでは、彼女たちが実際に英語で質問してスタッフが対応するというもの。
参加されたお二人に参加された感想を伺ったところ、
「今日の訓練では『どこに行けばいいのかな?』『どうしたらいいのかな?』と思う時が多かった。もしも本当に地震など起こった場合は、揺れが収まるまでは基本的な対処を自分で行い、その後は大勢の人について避難行動を取るか、非常口を利用すると思いますが、どこに行けば良いか分かりやすいともっと良いなと感じました。
また、実際に試した翻訳機は大変役に立つと思います。日本語の分からない人にとってはとても良い。あとは、対応カウンターを英語表記で目立たせること、英語の話せる外国人対応のスタッフが複数名いることは大切だと思いました。」
海外の方にとっては、不安を取り除く細やかな施策が想像以上に必要となることを肝に銘じなくてはなりません。

防災対策の詳細を知れば動きが変わる

防災対策の詳細を知れば動きが変わる

視覚にハンディキャップのある帰宅困難者役をしていた50代女性ワーカーは、普段とは異なる体感のもと次のようにお話されました。
「アイマスクをしての参加となると、音だけを頼りに状況を把握しなくてはなりませんが、驚くほど雑音が大きく感じられ、案内の声を拾うのは一苦労でした。複数箇所にスピーカーを置くなど案内音声を確実に届かせる工夫が必要になるのではないかと思います。
スタッフの方に『何か困っていないですか?』と丁寧に対応いただいた時はとても安心できました。しかし実際に震災が起これば、スタッフ側もすることは沢山あるでしょうし、対応人数は圧倒的に足りなくなると思います。丁寧な対応をするというのは大変難しくなるだろうと察します。
OBPエリアでの防災対策がどれだけあり、どんなところでスタッフの方が対応しているのか、そんな点もほとんど知りませんでした。これを知っていると知っていないとでは行動が変わってくるので、普段からこのような情報を得ておくことは大切だと思います。」

また、次のような盲点もあったようです。
「役柄と関係なく私個人ではっとしたのは橋の名前がわからなかったこと。OBPで働いていながらも、どこに何の名前の橋があるかまでは知らず『○○橋が通れません』と言われても分からなかったことは、怖いなと思いました。」
と、実際に参加したからこそ得られる気づきも教えてくださいました。

新たな町会とも協力し合う

新たな町会とも協力し合う

昨年度は周辺地域との連携として、桜宮連合が初めて参加しました。今年度は玉造連合町会が新たに参加。
OBP協議会の小田事務局次長(OBP災害対策本部副本部長)は、町会との連携について次のようにお話されます。
「OBPエリア周辺には主に桜宮地区、玉造地区、鴫野地区と隣り合っており、いざ震災が起きたとき、OBPエリアだけでは解決のできない問題も必ず出てくるでしょう。そんな時、隣接する地区との協力は必要不可欠であり、助け合いのネットワークが生きてくるのではないでしょうか。普段からお互いにコミュニケーションを取って存在を認識しておくことは大切なことです。」
と、周辺地域との密な繋がりの必要性を語られました。

訓練で成功しては“いけない”

訓練で成功しては“いけない”

小田事務局次長は今回の訓練のポイントを次のように語られます。
「もしも実際に震災が起きた場合、OBPエリアにとって重要になるのは、まず各ブロックで問題を解決する力です。個々のワーカーがOBPのことを『自分たちの地域である』と認識し、ビル同士で連携したり、ブロック単位でまとまったりする力は欠かせなくなります。各ビルの防災担当スタッフを中心として動ける体制が必要になるため、今年度は帰宅困難者に加えて、防災担当スタッフの育成という点も課題に追加しました。
来街者も多いこのエリアにおいては、ワーカーの皆さんが最も土地勘を持った人材となりますから、『誰かに誘導・案内してもらえる』と思うのではなく、来街者やハンディキャップを持つ方など避難が難しいとされる人々に対して積極的に先導しなくてはなりません。
また、訓練で成功して安心してはいけないでしょう。不測の事態の連続が災害であり、「完璧」はあり得ませんので、寧ろ数少ない訓練の機会でできるだけ失敗をして様々なケースを体感してほしいなと思います。」
と、失敗の大切さをお話されました。

OBPに“防災参謀会議”が誕生?

今後の計画として小田事務局次長が思案されていることが“図上訓練”。
「来年度実施予定のOBPエリア全体訓練での実動訓練や防災担当スタッフの経験など、これまで行ってきた各ブロック単位の訓練から全体訓練の一通りの訓練体験を経験していただけることになります。この実感が残っているうちに、図上訓練をしたらどうかと思案中です。担当の皆さんでテーブルを囲み、テーマや与えられた条件で物事を整理し、対応策について冷静に頭の中で描けるようにする訓練をするのです。これは、訓練を経験したからこその実体験が生きてくるものであると思いますし、2年程度この図上訓練と学習会を繰り返したらどうかと考えています。
そして、3〜4年に一度、図上訓練で練られた行動計画を実行し検証。また次の行動計画の改善へと繋げていくのが良いのではないかと思います。
これをもって実動訓練・図上訓練・学習会の3〜4年のルーティーンサイクルによりブラッシュアップしていける体制が確立されていけば良いと考えています。」
と、今後の展望をお話くださいました。

防災訓練の進化は止まらない

防災訓練の進化は止まらない

OBPエリアはビジネス街でもあるため、おおよそ3〜5年での転勤や異動が考えられます。残念ながら住宅街とは違って、訓練の知識・経験を積まれた人材が長年留まるかどうかはわかりません。
だからこそ、出来る限り多くのワーカーが体感し、少しでもいざというときに行動できる準備が大切であり、訓練で得られる経験や、改善点は常に引き継いでいかなくてはならならないでしょう。

多くの課題も見えた今年度の防災訓練。来年はいよいよエリア全ブロックの規模での避難訓練が予定されています。訓練内容が進化する中で、一人でも多くのOBPワーカーの方々が興味を持ってくれることを願います。

Wanted!

OBP Style では、特集記事のネタを募集しています。
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大阪ビジネスパークに関するテーマ限定ですが、様々なテーマを掘り上げていく予定です。
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