vol.45 コロナ禍をきっかけに考える新時代のビジネスの創造 共創が生み出す未来の社会価値【後編】

vol.44に続いてお届けする「共創から生まれる未来の社会価値」。【後編】は「KDDI DIGITAL GATE大阪」での取材から見えてきた、変化の激しい時代における共創のかたち、コミュニケーションの在り方をお伝えします。

OBPエリアを拠点とした3つのビジネス交流空間

【前編】でご紹介した「NEC Future Creation Hub KANSAI」「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY OSAKA(以降PLY OSAKA)」、そして今からお伝えする「KDDI DIGITAL GATE 大阪」はいずれも、OBPエリアにおいて、共創を目的としたスペースを展開しています。
さて、【後編】のKDDI DIGITAL GATE 大阪ではコロナ禍のような変化の大きな時代で、どのような発見や変化が起きているのでしょうか。

KDDI DIGITAL GATE 大阪:
加速する時代はスピーディな仕事スタイルが必要不可欠

日本は時代変化が苦手?昔ながらの開発フロー

日本は時代変化が苦手?昔ながらの開発フロー

KDDI DIGITAL GATE 大阪は、東京・沖縄に続く3拠点目として、2019年9月、ツイン21MIDタワー8階にオープンしました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業と一緒に推進し、ビジネス共創を行う場所です。

DXでは、5GやIoTなどITのトレンドを踏まえながらも、単にデジタルデータを利用するのではなく、潜在的に人が求める要望や課題など本質的な部分を見極めることで、人間の行動が変わるようなサービスが生み出されます。
アプローチの手法は「リーン」「デザイン思考」「アジャイル開発」等を用いた短いスパンでの価値検証を行うスタイルで取り組まれています。

お話くださったのは、立ち上げメンバーである経営戦略本部の本間明さん。
日本で主流となっている開発フローの問題点を教えてくださいました。
「サービスを自社開発できるようなITエンジニアを抱えている企業は日本が約30%、米国は60%以上です。
日本で多くの企業は、新たにサービスを作りたいと思ったときに、技術系企業に頼らざるを得ません。そのために都度見積もりから始める必要があります。
まずはしっかりと社内調整し、調査、会議を経て、やっと社内でのOKが出ます。そこから初めて外部企業に委託、発注。その後にようやく開発・運用が始まります。
サービスが提供されるのは、へたをすると1年半先です。
1年半後を想像して考えたサービスは、“念の為”の要素も含まれオーバープランニングに。開発フェーズに移る頃には“作ることが目的化”されているので途中変更も難しく、サービスが出る頃には、市場のニーズは変わっていることが多々あります。」

2020年、世界中にマスク人口が増え、仕事はテレワークを推奨されると誰が予想できたでしょうか。
このようなインパクトが起こると、従来の開発フローでは多大な時間・費用の損失が考えられます。
また、開発期間が長ければ「ここまで時間をかけたのだから…」という執着も膨らむため判断が鈍る点でもリスクだと、本間さんは話されます。

変化の激しい時代だからこそ“効率的な失敗”が大切

変化の激しい時代だからこそ“効率的な失敗”が大切

一方のアジャイル開発とは、1日ないし、1週間単位で、サービスを作っては検証してみて改善を行うというというスタイル。
従来は企画だけで3ヶ月を要するところを、わずか1ヶ月で企画を形にして検証までできるというスピード感です。
この開発フローの良し悪しを伺うと、今の時代にフィットする方法であることが見えてきます。

「もちろん要らないものを作ってしまうケースなど、失敗はあります。しかし、試作の評価で“完全な完成”はあり得ません。『良い』『欲しい』という理解に至った時点で、 “不完全な完成”状態の試作を本格的な商用化にむけて着手すれば良いのです。
逆に言えば、『これはイマイチ…』と評価されるものは、企画段階で間違っている可能性も考えられます。それなら尚更、数ヶ月かけて企画したものがボツになるよりも、1ヶ月でボツになる方が傷は浅いですよね。
まだ知られていないサービスを作ろうとしている時こそ、そんな“効率的な失敗”は大切ではないかと思います。」

アジャイルな働き方は、時代に置いていかれない

今回のコロナ禍で、仕事の仕方やルール変更を余儀なくされた方もおられるのではないでしょうか。
もしも個人レベルでアジャイルな働き方ができたなら…ということで、個々の働き方への応用を本間さんに尋ねてみました。

「我々自身も『自分たちがこの1週間で何をするのか』を月曜の始まりで明確に意識します。そして金曜の夕方には、週初めに設定したゴールに近づいているのか、きちんと振り返る。
日々“効率的な失敗”を繰り返し、自分たちが求める結果に近づくような働き方をしています。
これは意思決定の早さにも通じる話だと思います。即座に状況を理解し決定するというのを繰り返して慣れていくことが、市場の変化・技術革新の早い時代には重要ではないでしょうか。
個人的にも1週間単位で試してみると興味深いと感じています。期間が短いと目標を具体的に立てられ、達成できたかどうかが分かりやすいからです。
達成できたときは『3ヶ月後の理想に近づいている!』と実感できて仕事も楽しいと思います。」

これは良いヒントをいただきました。
“アジャイル”というワードは覚えていて損はなさそうです。

オンライン・オフライン、どちらも地場の良さはひとつの価値

オンライン・オフライン、どちらも地場の良さはひとつの価値

オンラインで言われている便利な点は皆さんも感じるところ。本間さんは同時にオフラインの価値について次のように考えています。

「オンライン化によって時間、空間、規模の垣根が一気に無くなりました。リアルの場では呼ぶに難しい方が参加しやすく、誰もが気軽に参画できる点は良いですよね。もちろん共創をするにも場所の制約はなくなり便利になりました。
だからこそ、今いる土地の個性・文化、立地面を活かしたアプローチは大切である気がします。
オンラインだから東京と仕事をすればよいということでもなく、やはり関西・大阪にも拠点がある、という事実は大切です。
いざオフラインで仕事となった時に『たしか大阪にあったな』と思ってもらえて、気軽に来ていただけるなら大阪で拠点を構える意味もあります。
そう思うと、オンライン・オフラインのハイブリッドで物事を考えることが必要なのではないかと思います。」

先の見え難い時代だからこそ、今立っている場所の価値を認識する

先の見え難い時代だからこそ、今立っている場所の価値を認識する

オンライン・オフラインともに価値を感じられている本間さん。
「OBPの地場の良さって何ですか?」と問うと次のようにお話くださいました。

「私は関東から大阪へ引っ越してきて1年半ほどになりますが、個人的にOBPはビジネスを進めるためにあるエリアなのかなと感じます。ここには日本のそうそうたる企業が集合していますから、OBPの企業さんが何かを発信したら、何となく同志のような気がして『あぁ頑張っているな』という印象を受けます。同じエリアにいるからこそ競争し合いながら、何かできるのであれば共創もしてみたいです。」

先行き不安である今の時代だからこそ、OBPエリアのどの企業も奮闘しているのだということを心のどこかに置いておくと、少し心強い気持ちが生まれそうですね。

コロナ禍が浮き彫りにしたのは変化への対応

2回にわたりご紹介してきた3つのビジネス交流拠点。これらは日頃より、業界・職業問わず様々な方と接している場所だけあり、それぞれがシェアしてくれたエピソードにはコロナ禍を負けずに進むヒントがあったような気がします。

何よりも三者共通していたのは、技術やツールに左右されない、本質を見極める視点を持たれていたこと。これらは、実はコロナ禍に関係なく、以前より大切とされていたことではないでしょうか。
時代の大きな変わり目にいる今こそ、企業も個人も、新時代の進み方について深堀りしていく時なのかもしれません。

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